Tada Kazuhiro Online tadabass.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

ベーシスト多田和弘のスケジュールなど


by tadabass
プロフィールを見る
画像一覧

事故(※閲覧注意)


それは一瞬の出来事でした

8月末のある日の夜
神楽坂にある演奏現場に向かう途中
東京メトロ東西線の神楽坂駅の上りエスカレーターに
ウッドベースと共に乗っていた時のことです

周りに人もいなく
ちょっと夏バテ気味だった私はベースにもたれかかるように
うなだれた感じで目をつぶって乗っていたのです

勘のいい方ならもうお分かりかもしれません

「ガコッツ!!」という轟音と衝撃に驚いて振り返ると
低い天井が目に入りました

なんとその低い天井にウッドベースを引っ掛けてしまったのでした

「まじかよ」
冷や汗がどっと出ました

私のウッドベースは入手してから10年経つのですが
自身の不注意で倒してしまったことが覚えている限り4回あります
そのどれもが軽症で済んでいたので
今回ももしかしたら大丈夫かも
というはかない期待を持ちながらベースを触ってみました

ネック部分を「お願い!」と押してみました

しかし祈りも虚しく
手ごたえはほとんど無く くにゃっとなりました

エスカレーターを降り 心臓がバクバクするのを感じながら
ウッドベースを横たえ ケースを開けて見てみました

見事 ネックが付け根から折れてしまっていました

それを見た瞬間 吐きそうになりました
自分の腕を折ってしまったのと同じ様な感覚といっても
過言ではなかったです

このエスカレーター使用時に引っ掛けてネックを折るという事象は
たまにミュージシャン仲間からその不幸な噂を耳にすることがありました
でもまさか自分がそんな失敗をする訳がないと思っていました

いろいろなことが頭をよぎりました
まずこの楽器は直せるのだろうか
また直せたとしても元の様な音が出るのだろうか?
そして 今日の演奏はどうしよう

初めて顔を合わせるギタリストで楽しみだったのに
事情を説明して 替えの楽器を私は持ってないので
その日の演奏はソロでお願いすることになりました

私は愛器の損傷がこれ以上ひどくならないように
そっと抱えながら来た道を戻ったのでした

b0167999_13302237.jpg


うう
b0167999_13312387.jpg

b0167999_13314272.jpg


家に帰って寝込みました
夢なら覚めてくれと思いました

でも起きてみたら やっぱり現実でした
翌日 大久保にあるいつもお世話になっている
弦楽器の山本さんに電話して事情を話すと

「ああ やってしまいましたか 大丈夫ですよ直りますよ
そういうお客さん 年に何人かいらっしゃいますよ」
とのこと

早速 持って行きました
b0167999_13411184.jpg

表板にも痛々しい傷が

魂柱(胴体の中で表板と裏板を支えているつっかえ棒)も倒れてしまって
見るも無残な姿
b0167999_13441276.jpg

相談したところ
修理は継ぎネックと呼ばれるもので
ヘッドと指板は既存のものを使い それ以外は丸ごと
カエデの木材から削りだして接合する方法があるとのこと

大変な技術を要する作業で
修理費用は○○万円 死にます

全治半月から一カ月ということでした

背に腹は代えられませんのでお店に楽器を託しました

修理の間 代車ならぬ代楽器を山本さんが快く貸して下さった
これで修理期間中の演奏はなんとか乗り越えられました

でもやっぱり自分の楽器が一番
大切なものって失ってみてあらためて気づくのですね

実はストレスで9月は気持ちが落ち込みました
共演者やお客さんの中にはいつものベースの音色を
期待してくれる方も多く 申し訳ない思いで一杯でした


この話をミュージシャン仲間に話すと
みんな一様に憐れんではくれるのですが
慰め方が色々で面白かったです

・楽器が身代わりになってくれた
・日頃の行いが悪いから罰が当たった
・ネックの替え時だった いい音になるに違いない

飲み友達でもあるギターの清田くんは

「俺もよく酔っぱらって楽器をぞんざいに扱ったりするから
気をつけよう」と言っていた

しかし意外と酔っぱらっている時は逆に気が張っているので
今までは大丈夫だったように思う

今回のように完全に気が抜けている時が危ないように思います


さて修理の途中経過です
b0167999_14314465.jpg

すべて手作業で木を削りだす経験と根気のいる作業です

9月半ば頃 ほぼ完成したので塗装の前に感触を確認してほしいとのこと
b0167999_14384981.jpg

支えて下さっている方が作業して下さった杉田さん
いつもありがとうございます!
白木のままのネックはすべすべしていて少し艶めかしい気がしました
弾いてみたところ違和感なし すごい!
b0167999_14511657.jpg

ネックの付け根の手のひらが触れる部分だけ微調整してもらい
いよいよ仕上げの塗装へ
b0167999_14525449.jpg

こんな仕上がりになりました ニューネックです 美しい!
b0167999_14535110.jpg


9月の末にはやっと手元に愛器が戻ってきました
音が前より良くなったような気がするのは
久々に弾いたからかしら

本当に一安心です
ふさぎこんでいた気持ちが晴れました

この事故以来エスカレーターを使うのを止めました
エスカレーターはよく考えると危ない乗り物です

危険予知というか 危険な可能性のあるものは勇気を持って避け
今後は事故の無いよう気を引き締めていきたいと思いました
[PR]
by tadabass | 2012-10-03 15:30 | 日常 | Comments(0)